Eight Days A Week - 働く母は週8日営業

元DeNAwebディレクター、現在北陸で夫と共にビジネスを営む35歳ワーキングマザー。マメ(息子・6歳)、アズキ(娘・3歳)、フットワークの軽すぎる夫との4人暮らし。

「それとなく伝える」は幻想である〜「村上さんのところ」に寄せられた質問のある傾向について

こんにちは、ミユキ(名字)です。

 

私は村上春樹が好きなので、現在期間限定公開中の 村上さんのところ/村上春樹 期間限定公式サイト というサイトも毎日欠かさずチェックしています。

(※上記サイトは2015年5月をもって公開終了しています。)

このサイトは、読者からの質問メールに対して春樹さんが回答するというものになっており、春樹さんご本人にメールを読んでもらい、なおかつお返事までもらえるということで大変な賑わいとなっています。


さて読者メールには結婚や男女関係に関する相談も多く、なかなか興味深いです。

そんな中でちょっと気になる「ある傾向」がありました。

 

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 photo by Andrew Wright

 

問題そのものに向き合わずして、問題は解決しない

結論から言うと、世の中には、悩みの相手ときちんと話をしないで一人で悶々と悩んだり怒ったりしている人が多いなあ、ということです。

対人関係の悩みなのに、その当人に対して何も働きかけをしないで一人で考えあぐねたところで問題は解決しないよ…と言いたくなる相談が多い!

そういったお便りに対して、(たぶん)春樹さんも「ちゃんと相手と向き合って、問題についてじっくり話をしないといけないですよ」というメッセージを繰り返し伝えておられます。

 

例をいくつか挙げてみます。(以下、太字は筆者)

 

1.彼女の将来観に意見できない

私は今大学生で、高校時代から付き合って5年になる彼女がいます。
彼女と過ごす時間は他の誰といるよりも楽しく、これからもこの関係のままでいたいと考えています。ですが最近、彼女が大学卒業後も働くつもりがないという趣旨の事を言うようになりました。

私はお互い経済的な面も含めて独立した上でお付き合いをしたいという考えを持っています。例えば私が働いて彼女が家事をするという、生活の分業をすることがあまり良い事だとは思えません。しかし、彼女の考え方に口を出す権利はないので、今のところ何もいう事ができておらず、一人で悩んでおります。

春樹さんの回答がこちら。

彼女の考え方に口を出す権利はないので、とおっしゃいますが、これから結婚しようとしているのでしょう(と読み取れますが)? だとしたら、お互いの生き方に口を出すのは当たり前のことじゃないですか。僕に相談する前に、まず二人でじっくりと話し合ってください

 

2.夫に子作り話を持ちかけられない

私は、まだ子宝に恵まれていません。身体的には問題ないので、タイミングを合わせることが大事なのですが、それを伝えることが夫の負担になりそうでできません。どうすれば、重荷にならず伝えることができるか教えてください。

 春樹さんの回答。

夫婦なのでしょう? 伝えるのが負担も何も、そういう負担を負い合うのが、夫婦として普通のことなのじゃないでしょうか?

 

3.愛想が良すぎる

私はとても愛想が良く、嫌いな人にも無愛想にはできません。おかげで、したくもない世間話に付き合わされる事が多々あります。嫌だという気持ちを伝えるコツみたいなものがあったら教えてください。

春樹さんの回答。

嫌だという気持ちを伝えるコツ? はっきりイヤだという以外に相手に気持ちを伝える手段はありません。いったん慣れると楽なものですよ。慣れてください。慣れるしかありません。


4.高齢の父に運転を止めてほしい

父(73歳)が運転が好きで、よく運転手を買って出るのですが、あまり上手な運転ではありません。上手になるように練習するか、他の人にお願いするように、とうまく言いたいのですが、傷つけずに言うにはどう言ったらいいでしょうか? 

春樹さんの回答。

大事に至らないうちに、どこかで誰かがはっきりと「もう運転はやめて」と引導を渡した方がいいと思いますよ。その手のことを、相手を傷つけないで口にすることはほとんど不可能です。傷つけてもしかたない、という覚悟が必要になります。人生、あるときには人は人を傷つけなくてはならないものです。誰かが「悪役」になることが必要になります。より大きな傷を防ぐために。

 

どれもこれも、その通りだな〜と思うばかりです。

 

かつては自分も「察してちゃん」でした

この「相手にはっきり言わないで察してほしい問題」で常々私が思い出す出来事があります。

 

以前勤めていた会社では私はある先輩とお付き合いしており、その後別れたことがあります(私から別れを切り出しました)。

でも、彼は別れた後も頻繁に携帯にメールをしてきました。

内容は取るに足らないのですが、別れてから会社では全く話をしなくなっていたので、ちょっと気味が悪く「もうメールはしてこないでください」と返信をすると、今度は宛先が会社メールに代わりました。

内容は、「今日の朝礼で体調が悪そうだったね。残業せずに早く帰ってゆっくり休んだ方がいいよ」とか「○○さんが退職するんだってね。君も仲が良さそうだったから寂しくなるね」とか、やっぱりいちいち会社メールで伝えるほどでもないような些細なことです。

けれど彼が(メールで)言うには、それらは「仕事上必要な伝達事項」だから、メールしないという約束に反するものではないということなのです。

私は彼からのメールは全て無視することに決めましたが、それでも月に一度くらいはそんなメールが届きました。

 

さてそのうちに私には新しい恋人ができ、社内の多くが知る事実となりました。(社員数30名を切る小さな会社で、しかも女性が多かったので、誰かに彼氏の話なんかをすればすぐに広まる環境でした)

そんなある日、私はその元彼から度肝を抜かれるメールをもらいました。

内容は以下のようなものでした。

「このところずっとある病気で体調が悪く仕事も立て込んでいる。今日は特に体調不良で、残業後に電車で一時間以上かかる家まで帰る気力・体力がないから、君の家に泊まらせて欲しい。

もちろん君に彼氏がいることは知っている。ただ寝させてほしいだけでやましい気持ちは何もないから心配しないで」


私は正直「なんだこいつ!」とぞっとしてしまいました。

別れた後も良好な友人関係が続いていて、お互いに恋人もいない状態ならありえる話かもしれないけど、

社内では最低限業務上のやりとりをするだけ、一方通行のメールが届いているだけ、おまけに私には新しい恋人がいるというこの状況で、彼だけが一方的に付き合っていた頃のような感覚を持っているのかと思うと気味が悪くなってしまいました。

 

いつも通りメールを無視することも考えましたが、このままでは深夜に自宅突撃される可能性もなくはないと思い、私は恋人にメールを転送して相談しました。

 

事実をありのままに伝えるということ

元彼の話なんかして腹を立てたり幻滅されたりしないかと考えていた私に対して、恋人がくれた返信はとても冷静なものでした。

 

前彼のメールは、個人的には全然不安にならない内容だし、
何が問題なのか、いまいち把握できません。
シンプルに事実をそのまま説明し、
事情もとり違えているようだけど、検討に値しない非常識な申し込みだ」と告げると良いと思う。

例文を作ったよ(笑)
「私の家に彼以外の男性を彼の了承無しに泊まらせることは不可能です。
(もちろん彼はそんなことを聞くだけで激怒する普通の男子です)
そんなお願いをしてくるというあなたの非常識さに驚き、無視しようと考えたけれど、どこか勘違いされているようなので返信します。
あなたの病気に関してはお気の毒に思うけれど私にできることは無いと思います。」云々。

ミユキが何故メールを無視しようとするのかいまいちよくわからんのだけど、
物事のあり方をしっかりとさせていくためにも、
しっかりと告げるべきです。
これは俺がミユキの上司ならば、提案ではなく命令として言います。

そういう間違った申し入れに対して最もまっとうな対処は、
義の在り方を明確にすることです。
変なところに押し込んでしまうと、変な風に突発してしまうことも無いとは言い切れない。
脅すわけじゃないし、なかなか人は無茶はしないけどね。
しっかりと、君の感じた驚きのようなものを返してあげなければ、
彼が自分の非常識なお願いについて、それが非常識だと思わないまま生きることになりますよ。

当然、俺は君の味方です。
いつでも間に入っていく覚悟はあるし、身体も張ります。
君に若干後ろめたいことがあったとしても、
(いきなり別れようと伝えたんだから多少はあるんじゃないかと察する)
時は無常なのだ。
仕方ないことは仕方ないことで肯定していくしかないですよね。
ということで、そのことを認識して返信してあげると良いと思います。
 

それとなく匂わせても真意は伝わらない

そんな訳で私は恋人の作った例文をほぼそのまま流用して返信し(笑)、それ以降元彼からはメールが来なくなりました。
(私が退職する時だけへんなメールが来ましたが)

一度は付き合っていた以上、私たちはあくまで「元恋人」であり「いち同僚」にはなり得ないというのが一般的な考え方だと思うのですが、彼は「付き合っていた頃のような感覚で接してこないでほしい」という私の主張を逆手にとるように
「付き合っていないんだから元恋人だとか意識するのもおかしい。つまり他の同僚と同じように接するのが当然ってことだよね」=「いち同僚として体調を気遣うメールはごく普通のコミュニケーションの範囲内だし、いち同僚に体調不良を理由に家に泊めて欲しいとお願いするのもおかしいことじゃない」
という解釈で自分の行動を正当化していたのだと思います。


私は、自分が感じている気持ち(気持ちが悪いとか、非常識だとか)を「メールを無視する」という方法で「匂わせている」つもりでした。
でもそれは、相手に全く伝わっていませんでした。
私の沈黙を、「やめてって言われていないから送ってもいいんだろう」といったように相手は何かしら都合よく解釈してメールを送り続けてきたのでしょう。
無視=拒絶、と思っている私とは裏腹に、彼には無視=容認と映ったのだと思います。

そんなのおかしいとかありえないとか、自分の心の中だけで思っていたって仕方ないのですよね。
はっきりと「あなたのしていることはおかしい」と伝えて初めて、彼は私の気持ちを理解したのです。
 
 
というわけで私は、夫に対して「察してほしい」「気付いてほしい」という心持ちを極力捨てるようにしています。
勝手に期待しといて勝手に裏切られたとか言って機嫌を損ねられても、男も困りますよね。

まぁそう思っていても、それでも「ちょっとは察してくれよ!」って思うのもまた人情ですが。
 

※追記
これを読んだ友人から「旦那さんカッコいいね!」と感想をもらいましたが、この恋人は現在の夫とは別人です。テヘッ



村上さんのところ

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